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tokai

Laboratory for Hadronic and Nuclear Physics



現在私たちは、次の2つの分野について研究を行なっています。
1 ハドロンのクォーク内部構造
2 多体系の物理学
この2つの研究は、アメリカのアルゴンヌ国立研究所(Physics Division)とオーストラリアのAdelaide大学(CSSM)および理化学研究所(RNC)と共同で行います。これらの一部は、日本の文部科学省の助成金に支援されました。

Ⅰ. ハドロンのクォーク内部構造

The quark structure of hadrons 我々のグループの研究分野はハドロンおよび原子核物理学である。クォークの有効理論を使ってハドロンの内部構造、原子核および中性子星を記述することを目的とする。ここで最近の研究課題2つを取り上げます。

(1) ハドロン中のクォークの運動
図1はベクトル中間子内のクォークの運動量分布関数である。それらの分布関数の測定はアメリカの新電子・イオン衝突加速器で行われる予定がある。図1aで示されている変数はクォークの縦方向運動量成分の割合(x) および横方向運動量の二乗(kT2)である。図1bはクォークの横方向運動量について積分した結果、即ち縦方向運動量成分(x)についての分布関数(PDF= Parton Distribution Function)である。4本の線は中間子(スピン1)およびクォーク(スピン1/2)のそれぞれのスピンの向きに対応する。(From: Y.Ninomiya, W.Bentz, I.C. Cloet: Phys. Rev. C 96, 045206(2017).)

(2) 原子核の応答関数
図2aは重い原子核(鉛を想定)と電子との非弾性散乱におけるクーロンの応答関数を示している。この図の変数ωはエネルギー移行、q は運動量移行である。実線は相互作用および媒質効果(即ち原子核中のクォーク運動の変化)を含み、鉛ターゲットの実験データと比較できる。図2bは応答関数とωについて積分した結果(クーロン和則と呼ばれている)を示している。実線は相互作用および媒質効果を含み、鉛ターゲットの実験データと比較できる。(From: I.C. Cloet, W.Bentz, A.W. Thomas, Phys. Rev. Lett. 116, 032701(2016).)

Ⅱ. 多体系の物理学

Compact Star1 私たちが多体系物理学の分野において最近注目しているのは、高いバリオン密度における核物質の状態方程式、クォーク物質への相転移、コンパクトスターの構造などです。
以前の研究では、核子のクォーク構造を考慮に入れた核物質の状態方程式を作りました。また、高密度におけるカラー超伝導クォーク物質への相転移についても調べました。これらの研究により、クォークの閉じ込めを考慮することによって、長いあいだ問題とされてきた核物質の"カイラル不安定性"を解決することができました。
我々の最近の論文では、上で述べた研究をベータ平衡のもとでアイソスピン非対称な物質へ拡張しました。また、それを用いた状態方程式によりコンパクトスターの構造を調べました。 左の図は結果の例を示しています。 左上の図は純粋な核物質(NM)からカラー超伝導クォーク物質(SQM)への相転移の影響を取り入れた状態方程式を示しています。右上の図は中性子星の質量を中心の密度の関数として示しています。左下の図は星の半径と質量の関係を示しています。右下の図は最大質量の星の密度分布を示しています。最後の図からは、半径6.9kmまでクォーク物質であり、その外側は核物質であるような安定したクォーク星の存在が可能であることがわかります。(From: T.Tanimoto, W.Bentz, I.C. Cloët. Phys. Rev. C101 (2020), 055204 (1903.06851)


Tokai University, Department of Physics, School of Sience
Professor Wolfgang Bentz